□固定化した過酸化水素を応用した新しいホワイトニング法
*詳しい内容は歯界展望2007年7月号145ページに掲載されています
3 新ホワイトニングシステムにおける治療手順
新しいホワイトニング治療の大きな特徴は大部分の操作を診療室で行い患者の手を煩わすことがほとんどない点にある。
初診時
初診時には通法に従い問診、口腔内診査を実施しホワイトニング治療に関するインフォームドコンセントを行う。
それから治療用のプラスチックホルダーを作製するための印象を採得して初診時の治療を終了する。
もし食物や薬物に対しアレルギー反応の既往がある場合は必要に応じて治療に使用する原材料に対するアレルギー反応の有無をパッチテストで確認する。
2回目来院時
2回目来院時にはチェアーサイドでプラスチックホルダーへ過酸化水素を一体化する(図4、5)。
図4・図5:過酸化水素をホルダーへ一体化する手順

A:粉体化した過酸化水素→B:過酸化水素を適量分取する→C:過酸化水素に硬化液を適量加える→D:スパチュラで混和する(粘土位の固さが適当)

E:混和した過酸化水素をトレーに適量分取する→F:薄いプラスチックシートをかぶせ過酸化水素が歯に付着することを防ぐ→G:トレーを歯に装着する→H:歯からトレーをはずし数時間室温に放置する
過酸化水素とホルダーの一体化には約4~5時間かかるので患者には帰って就寝時から使用するよう指導する。
漂白効果は過酸化水素と歯の密着時間が長いほど大きいので、新ホワイトニングシステムでは就寝時の使用が原則となる。
しかし就寝時のホルダー装着が不快と感じる患者に対しては日中数時間の使用を繰り返すよう指導する。
本システムでは使用法の制限はなく患者の要望に応じて自由に決めることが可能である。
これまでのホワイトニング法では漂白剤が液体あるいは流動体であるため患者が漂白剤を飲み込む危険性があった。特にホームホワイトニングで使用するジェルはいくら粘性を高めてもホルダーからあふれ出て飲み込む危険性があった。
しかし新しく開発されたホワイトニングシステムでは過酸化水素が歯の表面に密着固定されているので大量に流失する危険性はほとんどない。
たとえ過酸化水素がごくわずかホルダーから唾液中に流失したとしても唾液中には過酸化水素を分解する酵素があるので過酸化水素はほとんど検出されない。
このように過酸化水素を歯表面に密着固定できる新ホワイトニングシステムを用いることで、既存のホワイトニング法が抱えていた大きな問題の一つは解決されたと筆者は考えている。
過酸化水素と一体化されたプラスチックホルダーは患者に手渡して使用法(表1:使用上の注意)を説明した後4~5日後に来院するよう指導する。
3回目来院時
3回目来院時の処置はまず使用状況の確認を行った後ホルダー中の漂白剤を除去しホルダーをアルコールで消毒する。もしホルダーに変形や破損が見られた場合は新しくホルダーを作製する。そして新しい過酸化水素をホルダーへ一体化して患者に渡す。
4回目以降
4回目以降の治療については3回目と同様の処置を繰り返し行い患者が白さに満足するまで続ける。
通常4から5回過酸化水素を新しく交換することで多くの患者は白さを実感するようになる。
まれに患者が白さを実感しない場合があるが、そのときはまずホワイトニング治療の適用例だったか否かを確認する必要がある。
ホワイトニング治療は歯の表面の着色物質を過酸化水素により酸化(分解)することで歯に白さを取り戻す治療であるから、本来の歯の色が濃くそれに患者が不満を持っている場合はホワイトニング治療では問題は解決されない。
あらかじめホワイトニング治療の限界を患者に十分納得させ、ホワイトニング治療で問題が解決しない場合は他の治療法があることを事前に説明しておくことが重要である。
次に患者が白さを実感できない理由として漂白剤の効果が十分ではない可能性が考えられる。
その場合は治療法の変更が必要である。
基本的な治療法では4~5日ごとに来院させているが、この間隔を短くし週に2回来院させ新しい過酸化水素と交換する。
ホルダーに一体化された過酸化水素は経時的に漂白能が低下する。
理由は過酸化水素が消費されて歯と過酸化水素との間に隙間で出来て密着が悪くなるためである。
短い間隔で過酸化水素を新しくすることはこの隙間を生ずることを防ぎ高い漂白能が持続できる。
頻回に来院できない患者に対してはジェルを併用する。
ジェルは歯と過酸化水素の間に生じた隙間を埋めて両者の密着度を高める目的で使用するので、患者にはジェルにより歯を白くするわけではないことを十分説明しジェルを付けすぎないよう指導することが必要である。
ジェルは水溶性であれば十分目的を達成できるが既存のホームホワイトニング用ジェルを使用するのが簡便であろう。
新しいホワイトニングシステムでは主にチェアーサイドで作業をして患者のホワイトニングの進行状況をみながら治療内容を適時変更できるので歯科医にとっては治療状況を把握しやすく、患者にとっても家に戻ってからの煩わしい作業が不要という歯科医、患者双方にとってメリットが大きいと筆者は考えている。
表1:使用上の注意
使用上の注意
- 使用前に装置の内面を軽く水洗いして湿気をもたせてから歯に装着してください。
- 一つの装置は約24時間(装着時間を積算して)使用すると効果がなくなるので、効果がなくなる前に受診してください。
- 装置をつけているとしみたり痛みを感ずることがあります。これは漂白剤が歯の神経を刺激するためです。
そのときは装置をはずして軽くブラッシングして歯の表面に残っている漂白剤を取り除いて下さい(その際歯磨剤はつけないで下さい)。それから痛みが消えるまで漂白を中止してください。痛みが消えたら再開してもかまいません。 - はずした装置はすぐ水洗して、十分に水を切ってから日陰の乾燥した場所で保管してください。そのさい歯に接する面を下にするようにして保管してください(袋あるいは容器から出して保管してください)。
- 装着を始めた最初のころに口の中が苦くなることがあります。これは漂白剤が口の中にもれでたためです。
気になる場合は装着後苦味が軽くなるまでうがいをしてください。 - 装置をつけていて痛み以外の不快症状を感じたときは直ぐにはずし、うがいをしてください。それから歯科医院に連絡して下さい。
- 治療中は虫歯になりやすくなるので、就寝時に使用するときは 装置を歯に装着する前、 ならびにはずした後にかならず歯を磨いてください。
- 初めて就寝時に使用するときは日中2~3時間使用して異常がないことを確認して、それから就寝時に使用してください。
- 装置を取り付けたり,はずしたりするときは無理な力をかけないで下さい。装置が変形し痛みが出る恐れがあります。
- 装置をつけた後、強く噛まないでください。装置が変形し痛みが出る恐れがあります。
- 装置をつけたまま食事をしないで下さい。装置が変形し痛みが出る恐れがあります。なお飲み物は差し支えありません。