NPO法人 ホワイトニングプロパゲーションセンター

ホワイトニング治療について――基礎編

第二章 歯科医が行うホワイトニング治療について

前の章で歯科医が行うホワイトニング法にはオフィスホワイトニングとホームホワイトニングがあることを述べましたが、この章ではそれぞれの方法についてもっと詳しく説明します。

1 オフィスホワイトニング

まずオフィスホワイトニングです。
この方法では一般の歯科治療と同じように歯科医が全部の処置を行います。
まず白くしたい歯以外に漂白剤が作用しないように歯茎などを防護します。
これは高い濃度の漂白剤が歯茎などに付着することで発生する強い痛みを防ぐためです。
そして漂白剤を白くしたい歯に作用させます。その際熱を加えると漂白効果が高まるので、熱がでる光を当てる場合もあります。また酸化チタンを併用して漂白効果を高める工夫も最近行われるようになりました。
この処置は約30分から1時間続ける場合が多いようです。人によっては1回の治療でかなり白くなることがありますが、多くの場合2から3回は通院が必要なようです。

現在日本でホワイトニングといえばこのオフィスホワイトニングをさす場合が多いのですが、歯科医の立場から言えば処置をすべて自分が行うので結果に自信がもてます。
その結果どうしても患者さんにオフィスホワイトニングによるホワイトニングを勧めがちですが、やはり問題点があることを忘れてはなりません。

その第一が強い効果を示す薬を使うので、副作用が心配です。
強い漂白剤は神経を強く刺激するので、虫歯や歯周病があるとホワイトニング治療ができません。さらに虫歯を治療して詰め物をしている場合も要注意です。歯と詰め物の間から漂白剤がしみこんで痛みを起こすことがあるからです。ですのでこの方法でホワイトニングを行う場合は事前に十分歯や歯茎の状態を調べなければなりません。基本的には虫歯も歯周病もかかっていない歯が対象です。

またこの方法による白さには人によって不満があるかもしれません。
オフィスホワイトニングでは、すこし濁ったような白さになることが多いのです。
専門家はこのような白さを「すりガラス状」と表現します。
もともとの歯を良く見てみるときらきら輝いたような光沢があります。これは歯の表層を構成するエナメル質が高度に結晶化されたアパタイトでできているためです。ちょうど炭の成分である炭素が高度に結晶化されていると輝くダイヤモンドになることと同じです。さらにエナメル質の表面には唾液由来のたんぱく質が薄くコーティングしたように付着していて歯の光沢をさらに高めています。オフィスホワイトニングで使用する高濃度の漂白剤はエナメル質表面のたんぱく質を分解して歯の表面がでこぼこになるといわれています。そのため歯の表面がすりガラス状になって、光が乱反射することで白く見えるというわけです。欧米人の歯の色は日本人より白いので、すりガラス状の白さでもあまり気にはしないようですが、われわれ日本人を含めた黄色人種の歯は、欧米人よりもすこし黄色みががって、うすいクリーム色をしています。ですのでオフィスホワイトニングで白くすると、自然な白さよりも人工的な白さになる場合が多いようです。

オフィスホワイトニングでは歯の表面をでこぼこにしますので、そのままにしておくと食べ物や飲み物由来の着色物質が沈着しやすくなります。そのためオフィスホワイトニングはホームホワイトニングより「後戻り」が起こりやすいといわれています。これを防ぐため最近ではオフィスホワイトニングした後で透明なレジンで歯をコートして歯のでこぼこをなくし「後戻り」を起こしづらくする工夫がされるようになってきました。

オフィスホワイトニングは歯科医が100%行う治療で通常1時間ぐらい患者さんが治療台を占領します。
現在日本では保険医療が基本となっています。これはかかった医療費を患者さん本人、支払い組合、そして国が分担する仕組みです。3割負担の患者さんの場合、窓口で3000円支払ったとすると、実際かかった医療費は9000円となります。ホワイトニングは病気の治療ではないので保険がききません。全額を患者さんに負担してもらうことになります。さらにオフィスホワイトニングでは漂白効果を高めるため高価な機械も使うことが多くなっています。そうしますと1時間近くを1人の患者さんが治療台を占領し、機械の償却費を考えると1本1万円ぐらいを患者さんに負担していただかねば、歯科医にとっては通常の保険診療をしたほうが良いということになってしまうのです。その結果オフィスホワイトニングの費用が高くなって、患者さんからすると、歯を白くするのに12万円以上もかかるの、ということになるのですが、その理由は以上のようなことによるのです。患者さんが多くなれば患者さんが支払う費用も安くなるのですが、現在は高いから患者さんが少ない、少ないから1人が支払う費用が高くなる、という悪循環に陥っている状況です。

2 ホームホワイトニング

現在歯科医が行っているもう一つのホワイトニング治療法がホームホワイトニングと呼ばれる方法です。
これは歯型に合わせて作られたプラスチック製のホルダー(トレー)に患者さん自身が漂白剤を注入して歯に被せることで歯を白くするという治療法です。
現在日本では1社が製品化し、ほかにアメリカ製の2製品が厚生労働省から認可されています。
アメリカでは十社近い会社がホームホワイトニング用の漂白剤を販売しており、日本の歯科医の中でも個人輸入してホワイトニング治療に用いている場合があります(歯科医以外は購入できません)。
患者さんは診療所で歯の状態を調べてもらった後、歯型を取ります。
次に診療所へ行ったとき、歯科医からホルダーとジェル状の漂白剤を受け取ります。そして帰ってから好きな時間にジェルをホルダーに注入して歯に装着します。添付の説明書によると1日2時間の使用で約2週間後には白くなるとしている場合が多いようです。
実際の漂白は患者さん自身が行うのでオフィスホワイトニングと比較すると安い費用で歯を白くすることが可能です。
反面、患者さんが主体的に行うということは、歯科医がきめ細かく指導しなければ患者さんは自己流のやり方をしてしまいがちになり、その結果十分な効果が得られなくなります。
そのため、歯科医と患者さんの間に十分な信頼関係ができあがらないと、効果が不確定になりがちです。
歯科医は治療効果がよくわからないものを避けますので、患者さんにはホームホワイトニングを積極的には勧めない傾向があります。またホームホワイトニングの効果は患者さんの意欲、性格にも大きく左右されます。なぜなら漂白するためには毎回ホルダーにジェルを注入し、使い終わったらホルダーをきれいに清掃するという手間隙が必要だからです。数日なら容易なことでも2週間近く、場合によっては一ヶ月も二ヶ月も続けなければならないのです。ホワイトニングをするという決意と几帳面さがなければなかなか効果が期待できません。
それからジェルをホルダーに注入して歯に装着すると、どうしてもジェルがあふれでてきます。添付の説明書ではティッシューでふき取ってください、とありますが、完全にふき取るのは不可能でしょう。どうしてもすこしは飲み込んでしまいます。ほとんど害は無いのですが、やはり気持ちのいいものではありません。それと味がいまいちですね。特にアメリカ製のジェルはアメリカ人向きにできているらしく、日本人にとってはちょっと強烈です。日本人にはもっとマイルドな味が向いているでしょう。ともかく毎回不快とは言わなくても、あまり快適ではない味に我慢しなければならいことも、毎日続けようという意欲を萎えさせるものです。

しかしオフィスホワイトニングに比べ白くなった歯は、「すりガラス」のような白さではなく輝きを増した自然な白さになります。費用に関してもオフィスホワイトニングよりも少なくてすみます。オフィスホワイトニングとホームホワイトニングを比較すると、現段階ではホームホワイトニングに軍配が上がりそうです。今ホワイトニングをやろうかどうか迷っている方は、まずホームホワイトニングを行い、どうしても白さに満足いかなければオフィスホワイトニングに進まれることをお勧めします。

以上のオフィスホワイトニングとホームホワイトニングが現在歯科医が行っているホワイトニング法で、併用する場合ももちろんあります。