ホワイトニング治療について――上級編
ここからはホワイトニングについてはある程度の基礎知識を持っている方を対象としたホワイトニングについて専門的なお話をしたいと思います。
内容は以下の通りです。
- 第四章 歯が着色する原因
- 第五章 歯が白くなるメカニズム
- 第六章 ホワイトニング以外の歯を白くする方法
- 第七章 ホワイトニングとQOL
第四章 歯が着色する原因
では、最初に、どうして歯が着色するのか、その原因について述べたいと思います。 原因を知ることで、より効果的にホワイトニング治療を施すことができることになります。
歯が着色する原因には大きく分けて歯の外側から着色する場合と歯の内側(歯髄側) から着色する場合の2通りに分けられます。
1 外側から着色する場合(外因性原因)
もっとも多いのが食べ物、飲み物由来の着色でホワイトニングによって確実に白くなります。カレーや香辛料、そしてコーヒー、 紅茶などを日常的に摂取していると色素成分が歯の表面に沈着して歯が着色します。
毎日歯を磨いているのにどうして色が付くのかな、と不思議に思われる方もいらっしゃるでしょうが、これはちょうどコーヒーカップや茶碗を毎日洗っていてもだんだんと黒ずんでくることと同じなのです。カップや茶碗は定期的に漂白して白さを保ちますが、ホワイトニングは食器の漂白に相当するもので、いつまでも白い歯を保つには欠かせないものなのです。
ホワイトニングで歯が白くなるのはこれら着色物質が有機物質の場合に限ります。無機物質が原因で着色している場合はホワイトニングを行っても白くはなりません。 好例が子供の虫歯予防に使われている薬液を歯に塗って歯が黒く変色した場合です。この薬液には銀が入っているので空気中の酸素に触れると黒色の酸化銀に変わります。 それで虫歯予防のため薬液を塗ると歯が黒くなるのですが、ホワイトニングで使用する漂白剤はこのような無機物には作用しません。 それから虫歯を治療して詰めた部分もホワイトニングでは白くなりません。詰め物の色は無機物質だからです。 基本的にホワイトニングで白くなるのは自分の歯だけで、かぶせた歯や詰めた部分は白くならないと考えておいたほうがいいでしょう。
2 歯の内側から着色する場合(内因性原因)
これには歯自体に原因がある場合(局所原因)と、歯以外に原因がある場合(全身的原因)があります。
局所原因でもっともよく見られるのが何らかの原因で歯の神経(歯髄)が死んだ場合です。
多くの場合出血を伴いますので、血液中の赤血球が歯髄内にもれ出て破壊されます。
赤血球は酸素を運ぶためにヘモグロビンというたんぱく質を持っていますが、これが歯髄の中で分解して着色物質へと変化します。そのため神経が死んだ歯は黒ずんでくるのです。
このような歯はこれまで説明してきたようなホワイトニングではなかなか白くなりません。このような歯を白くするには、まず神経があった部分をきれいに掃除します。
それから中に漂白剤を詰めておきます。すると歯の内側から漂白剤が歯の中にしみこんで着色物質を分解してくれるのです。
内因性の着色で全身的原因の代表的なものが抗生物質による着色です。
テトラサイクリンという抗生物質が今から20から30年前によく使われていました。
特に小さい子供が小児科へ行くとよく処方されていた薬です。
病気によく効くのですが骨や歯に蓄積しやすいという性質があり、特に歯が成長する時期にこの薬を飲むと歯の形成が阻害され着色します。
着色の程度は軽いものから重症までさまざまです。軽い着色ならホワイトニングをすると着色があったことがわからないほど白くなりますが、重症では着色が弱まっても完全に消えることはなさそうです。
内因性の着色で全身的原因のもう一つが加齢変化です。
子供のころは白い歯でも、大人になると黄色みがかり、年をとると歯が黄ばんできます。
これは年をとると皮膚が黄ばむことと基本的には同じです。
このような変化はメイラード反応と呼ばれる化学反応が体の中でおきていることによるのです。
メイラード反応とは糖とアミノ化合物(アミノ酸、ペプチド、たんぱく質)が結合して褐色物質を生成する反応です。
虫歯になるとその部分が黒ずんでくるのもメイラード反応によるのです。
この反応はゆっくりと進む反応なので若いひとでメイラード反応による褐色物質はあまり蓄積していませんが、 年をとるとメイラード反応でできた褐色物質が皮膚に蓄積して黄色くなってくるのです。
同じことが歯の中でも起きているので年をとると歯が黄ばんでくるのです。 弱い黄ばみならホワイトニングで若いころの白さに戻りますが、強い黄ばみの場合はホワイトニングだけでは難しい場合もあります。
メイラード反応は糖がたくさんあるほど、どんどん進みますので、重症の糖尿病の患者さんでは皮膚の黄ばみが健康な人よりも強くなりがちです。
一般的に外因性着色はホワイトニングできれいな白さになりますが、内因性着色はホワイトニングでも白くすることが難しい例が多く、その場合は後で説明させていただく他の方法の適用例となります。